新宿のカメラ屋さんの階段を降りた茶店は
ジッポの油とクリーム あんたの台詞が香った
云ったでしょ?「俺を殺して」
椎名林檎 浴室
2018年某日 晴れ
営業回数チャレンジ当日。
「こんな企画を最後までやり遂げられるだろうか」
そんな弱気な気持ちで都内某所の営業所に向かっていた。
戦いの舞台は新宿、主に歌舞伎町。
人々の欲望と本能が錯綜する街。
タクシードライバーになってから過去2回、車内に嘔吐された経験があるが、
そのいずれも歌舞伎町から乗った客であった。
そんな歌舞伎町を、ほぼ丸一日タクシーで走り回り客を乗せまくる。
はっきり言って、何が起きてもおかしくない。
企画を宣言したものの、若干めんどくさくなってきた。
13:30 都内某所タクシー営業所
営業所に到着。今日の相方を確認する。
黄色のクラウン・・・。
長距離客を避けるにはちょうどいいではないか。
黄色と言えば4社カラーと呼ばれ、黒(ニューカラー)と比べると、
ロングが出にくいと思われる。
今回の企画はいかに低単価を積み重ねるか。
ラッキー?
14:03 出庫
点呼を済ませ、黄色のクラウンに乗り込む。
テンションが上がってきた。
通常業務ではありえない、「出庫直後の自腹高速利用」で、
新宿へ直行する。
14:25 ゲーム開始
20分程度の快適なドライブで、新宿出口を降りる。
戦いの舞台、新宿へ到着。
「さぁ、ゲームの始まりだ。」
西新宿から青梅街道を右折し、歌舞伎町へ向かう。
直後、バス停で早速手が上がる。
【1組目】
14:27-14:44 西新宿1→大手町2 3,930円 外国人観光客
「お客様をお願いできますか?」
・・・ホテルのスタッフではないか。
これは嫌な予感。
・・・外国人観光客が登場。しかもスーツケース持ち。
「Tokyo station, We use Shinkansen.」
1組目からいきなりの中距離。
通常であれば歓迎すべき状況であるが、今日に限って言えばタイミングが悪かった。
さて、どうするか。
新宿から東京駅はかなりのロスタイムになってしまう。
空車時に乗車申込があった場合、正当な理由がない限り、乗車拒否ができない。
時間的な最短ルートで目的地へ送り、新宿へ戻ってこなければいけない。
目的地は東京駅の八重洲口(新幹線口)。
知る人ぞ知る、首都高八重洲線東京駅八重洲口地下降車場を使えば高速を降りることなく、乗客を降ろすことができる。
しかし、知っているだけで実際に試したことががない。
にわか仕込みの知識だけではたしてうまくいくだろうか・・・
・・・今日は勝負の日。イチかバチか、やってみるか。
高速道路利用で進行することで乗客の了解を得る。
先ほど出たばかりの新宿出入口から、15分程度で目的地へ。
ちなみに、地下降車場はこんな感じの怪しげな雰囲気。
自分が見知らぬ異国の地で、タクシーにこのような場所に連れてこられたら、
確実に不安になるであろう。
今回の外国人観光客は全く疑うそぶりもなく、颯爽と地上へ消えていった・・・
さて、そのまま本線に戻り新宿へ。
高速を降りることなく、乗客を降ろすことができたが、
料金的には、一度高速を降りたことになるようである。
目標の60回まであと59回・・・
タイムリミットまであと19時間・・・
続く