こんな方におすすめ
- 新人ドライバー
- 売上に伸び悩む人
- 実車率、回数を上げれば売り上げが伸びると思っている人
新人タクシードライバーは
- とにかく回数を稼げ
- 実車率を上げろ
と指導されることがよくあると思います。
タクシー攻略サイト等でもこのような意見が散見されます。
回数を稼ぐことで、単価が低くても売上としては多くなる。さらに道も覚える。
実車率が高いということは、行った先でお客さんを乗せられているので無駄がなく効率がよい。
そんな感じの理屈だと思います。
逆に、ホテルや銀座乗り場の付け待ちなどの「ロング狙い」は新人は避けるようにと言われることもあります。
果たして本当にそうなのか?
結論は、
- 実車率と営業回数を増やさなくても売上は上がる
- 客単価は売上に直結する
です。
私の「東京」での1年間の営業データをもとに、検証してみたいと思います。
※「大阪」は遠距離割引の影響が大きく、結果が変わってくると思います
もくじ(文字タップで移動)
実車率と売上
実車率を上げなくても売上はあがります。
根拠は私の営業データです。
実績データ
私の一年間の「実車率」と「売上」の推移は以下。
※売上は1日の平均売上(税込)。4~7月は隔日勤務なので日勤換算(÷2)
※実車率はその月の平均値
乗務開始から終了まで実車率はほぼ50%と横ばいなのに対し、売り上げは右肩上がり、初月の倍以上です。
つまり、実車率を上げなくても売上を伸ばすことができたということです。
一年間の乗務、全253日分の「実車率」「時間単価」をプロットすると以下。
※1 時間単価 ⇒ (1日の売上)÷(実働時間※2)
※2 出庫~帰庫の時間から休憩時間(日勤:1.5時間、隔日勤務:3.0時間)を引いた時間
実車率と時間単価(売上)は無関係ではなさそうですが、バラつきが多く関係性は高くないといえます。
実車率の意義
実際、私はタクシー乗務開始から終了まで実車率を数字として意識したことがありません。完全に無視していました。
当時から実車率が売上に直結する指標とは考えていなかったからです。
そもそも
実車率=営業距離(実車距離)÷全走行距離
です。
なので、いくら営業距離が伸びても(売り上げが伸びても)、全走行距離も伸びれば実車率は落ちます。
私のような「都心⇔郊外の高速ピストン営業スタイル(ロング狙い)」だと、どうしても全走行距離が伸びるため、売り上げが伸びても実車率は低めとなります。
月を追うごとに売り上げが伸びても、実車率が変わらなかったのはそのためです。
よって、私のような営業スタイルでは必ずしも「売上=実車率」ではなく、売上においては実車率は無意味な指標なのです。
上のプロット図のように、乗務ごとに実車率の上下はありますが、それは狙ったものではなく、たまたまくっついてきた数字です。
タクシードライバーが削減すべきはどちらかというと「空車時間>空車走行距離」だと思います。
いくら実車率が高くても乗せるのに時間がかかっている、空車時間が長ければ売上は落ちます。
実車率は全走行距離に対する実車距離の割合なので、環境負荷の目安としては意味があると思います。
しかし、
・法人タクシードライバーは燃料代を負担しない
・売上に対する燃料代の割合は低い
ので、ドライバーとしては個人的には無視してもいい数値かなと思います。
ちなみに、金曜夜は実車率が上がりやすいです。
理由は、
・他の平日と比べて客単価が低い
・他の平日と比べて客が多い
ので、都心部を中短距離でグルグルと行った先営業でつながりやすいからです。
なので、金曜日は稼げますが非常に疲れます。
客単価の高い火、木が一番好きでした。
回数と売上
営業回数を増やさなくても売上は上がります。
根拠は私の営業データです。
実績データ
※売上は1日の平均売上(税込)。4~7月は隔日勤務なので日勤換算(÷2)
※営業回数は1日の平均値。4~7月は隔日勤務なので日勤換算(÷2)
乗務開始から終了まで営業回数は15回前後と横ばいなのに対し、売り上げは右肩上がり、初月の倍以上です。
つまり、回数を増やさなくても売上を伸ばすことができたということです。
一年間の乗務、全253日分の「営業回数」「時間単価」をプロットすると以下。
※1 時間単価 ⇒ (1日の売上)÷(実働時間※2)
※2 出庫~帰庫の時間から休憩時間(日勤:1.5時間、隔日勤務:3.0時間)を引いた時間
※3 隔日勤務の営業回数は日勤換算(÷2)
見事に分散しており、営業回数の大小は時間単価(売上)には全く関係がないことがわかります。
客単価と売上
客単価は売上に直結します。(回数を維持できれば)
根拠は私の営業データです。
実績データ
※売上は1日の平均売上(税込)。4~7月は隔日勤務なので日勤換算(÷2)
客単価にほぼ連動して売上が伸びていることがわかります。
客単価は売上に直結します。
一年間の乗務、全253日分の「客単価」「時間単価」をプロットすると以下。
※1 時間単価 ⇒ (1日の売上)÷(実働時間※2)
※2 出庫~帰庫の時間から休憩時間(日勤:1.5時間、隔日勤務:3.0時間)を引いた時間
R^2=0.5786
R=0.7607
なので、客単価と時間単価は高い相関関係にあるといえます。
つまり、客単価が時間単価(売上)に直結しているということです。
客単価の平均値はコントロールできる
売上の計算式は
売上=客単価×回数
なので、私は客単価を改善しつづけた、ということです。
「客単価は回数と比べてコントロールが難しい」という意見もあります。
確かに、「今から乗せる客」の単価をコントロールするのは難しいです。
(例えば最寄り駅⇒自宅に目的地変更など、接客でコントロールできることもあります。が、レアケースです。)
しかし、客単価の「平均値」はコントロール可能です。
具体的には、客単価の平均値が高い
・場所
・時間
・曜日
で営業することです。
とはいえ、回数が下がれば売上も落ちますので、最低限の回数を維持しつつ客単価を上げるには「空車時間の短さ」も求められます。
結論的には東京では「平日夜の銀座周辺」がベストと考えます。
高単価の客が多いわりには比較的すぐに乗せられることが多いからです。
>>やっぱ、銀座はすごいね 売上、単価、高速利用率が圧倒的に上がりました(2019年2月度のデータ)
東京で典型的な平均客単価が高い乗り場は「羽田空港」です。
羽田空港のタクシー乗り場の平均客単価は約7000円です。
>>羽田空港のタクシー営業効率 → 平均客単価は7,000円
羽田空港以外だと「帝国ホテル」「ザ・プリンスパークタワー」「コンラッド」などの超高級ホテルも空港率が高く単価高めです。
>>【新人向け】高単価な客が多い場所を探す効率のよい方法【ホテル・飲食街編】
しかし、上記の超高単価乗り場の欠点は
「待機時間が異様に長くなることが多い」
です。
つまり、これらの待機時間の長いエリアだけを思考停止で攻め続けると、「客単価は高いが回数が減り売上も伸びない」という状態になります。
(タクシーの売上のみで考えず、待機時間中に別のことができる、という考えであればよいと思います)
もちろん、銀座にも低単価の客(ホステス、ボーイなどに多い)はいます。
単価が低いと言われる新宿、歌舞伎町にもロングの客はいます。
しかし、重要なのは客単価の「平均値(期待値)」です。
新人時代に「新宿だけで営業したらどうなるか」という実験をしました。
結果は営業回数50回、平均客単価1541円(税込)でした。※隔日勤務で実施
一方、銀座周辺をメインとして営業していたときの月間平均客単価は3531円(税込)※です。
※2019年3月度の平均客単価
もちろん、この平均値の中には歌舞伎町からのロング客や銀座からのショート客も含まれています。
繰り返しますが、重要なのは客単価の「平均値(期待値)」です。
例えば、1枚300円の宝くじで期待値がA店600円、B店150円ならA店で買いますよね。
(実際にはA店のような期待値200%の宝くじは存在せず、一般的な宝くじはB店のような期待値50%くらいといわれています)
人間は自身の経験を頼りに行動しがちです。
歌舞伎町で超ロングを引いたから、歌舞伎町をメインに営業をする。
銀座でホステスに暴言を吐かれたので、銀座では営業しない。 ←新人時代の私です
気持ちはわかりますが、正直もったいないです。
もちろん、状況に応じて銀座周辺以外のエリアでも営業することは必要です。
例えば、金曜の夜は「どこでも乗せやすい」「比較的短距離が多い」ので、自分の得意でないエリアでも行った先営業がしやすくなります。
また、平日夜でも銀座周辺にタクシーが殺到しすぎて全然乗せられない、ということもあります。
夜の遅い時間になると銀座周辺は厳しいことが多いです。
そんな時は、六本木、新宿、渋谷など別のエリアでの営業が必要です。
客単価を上げればタクシー三重苦「事故・違反・苦情」リスクが減る
客単価を上げればタクシー三重苦「事故・違反・苦情」リスクが減ります。
理由は>>客単価を上げれば「事故・違反・苦情」リスクが減りますを見てください。
タクシードライバーが最重視すべき指標 ⇒ 時間単価
客単価は重要と考えますが、売上を求める全てのタクシードライバーが最重視すべき指標は「時間単価」です。
客単価は売上に直結する、といいましたが、客単価「のみ」にこだわっていたら売上を伸ばすことは難しかったと思います。
例えば、羽田空港の平均客単価は約7000円なので、羽田空港のみで営業をすればそのくらいは達成できるはず。
しかし、羽田空港の待機時間は他の営業場所と比べて非常に長いです。
私の計算では、何も考えずに羽田空港乗り場「のみ」でピストン営業をした場合、時間単価は東京のタクシードライバーの平均値(約3600円)を下回ります。
計算の詳細は>>羽田空港のタクシー営業効率 → 平均客単価は7,000円を見てください。
時間単価を上げるための客単価以外に重要なポイントは
「客を乗せた瞬間から次の客を乗せるまでの時間を減らす」
です。
細かく言うと、
①乗車~降車までの実車時間
②降車から営業エリアまでの移動時間
③営業エリアに着いてから客を乗せるまでの時間
のそれぞれの時間を短縮する必要があります。
それぞれの時間短縮方法は
①乗車~降車までの実車時間
・銀座周辺など高速利用率の高いエリアで営業する
・乗車時、高速利用を客に提案する
②降車から営業エリアまでの移動時間
・高速を利用するなど、時間的最短ルートで営業エリアへ戻る
③営業エリアに着いてから客を乗せるまでの時間
・銀座周辺など高単価かつ客数の多いエリアで営業する
・その他、営業テクニックを駆使
大阪は客単価を伸ばしにくいかも
経験がないので確かなことは言えませんが、大阪でのタクシー営業では東京と比べて客単価を伸ばしにくいかもしれません。
理由は強烈な「遠距離割引」です。
5000円を超える金額について5割引です。
一応東京にも遠距離割引はありますが、9000円を超える金額について1割引なので、大阪と比べたらかわいいものです。
よって、大阪では、私のような営業スタイルの人は少なく、回数・実車率重視の人が多いかもしれません。